人海戦術のパネル額装(2)

こんにちは、先週、若手歌舞伎役者の奥様が亡くなられました。闘病生活をブログで海外へも発信していたそうですね。多くの闘病中の人達に勇気を与えたという・・。社会全体が家族の「愛」とか「絆」を再考する良い機会になったと思います。ご主人の市川海老蔵氏の記者会見も立派でした。

謹んでご冥福をお祈り致します。

前回に続き、パネル額装の話です。ここにきて、大問題が発生。想定外の事態に陥り、スタッフ一同、青ざめることに。

単体のパネルとしては正確に出来上がったものと認識していましたが、連結させると、あちらこちらに誤差が現れてきました。外側の直線ラインもわずかに狂いが出ています。

「どうしたことだ、これは」

単体の「パネル」ですと、すべての寸法は許容範囲なのですが、4枚6枚とジョイントが進むと徐々に誤差が膨らんできます。ジョイントネジを緩めたり、締めなおしたりするだけでは調節しきれないのです。

「さて、どこからどうする」

穴の位置も微妙に変更しなければいけません。カンナでの削りも加えました。ここからは、持久戦です。日程から逆算すると、もう時間に余裕がありません。作品を張ってからでは手遅れです。その前に修正しておくことが「絶対条件」です。



ここでスタッフ全員がプロ意識を発揮。プライドをかけて、全パネルの歪みを修正。深夜に至りましたが、ほぼ完璧に終了させることができました。



一見、舞台の大道具を造作しているようにみえますね。写真は、最後の仕事で、弊社の夜の駐車場です。スタッフの皆さん、遅くまで本当にご苦労様でした。

そこで、次のテーマに移ります。パネルのベニヤ部分から出るアクを封じ込める件です。

これは何種類かの処方があります。まず、パネルにニスを塗る方法です。乾くと固まって膜になり「アク」を封じ込めます。しかし、この方法は、完全とはいえません。稀にニス自体が反応して、作品にシミを誘発させることがあるのです。

次に胡粉と膠の混合液(石膏)で塗り固める方法があります。過去に何度も、パーフェクトな結果を出していますので、今回はこれを中心に検討しました。全体に塗った後、乾燥させてからペーパーで磨きます。滑らかにして厚みを均等にすれば完成。その上に作品を張ります。すべて手作業になりますが、完璧です。

しかし、これにも欠点があります。石膏ですから、薄くても重量が増すのです。今回の様な大型パネルには適合しないと判断、不採用としました。

今回はパネルに和紙を張り込んでアクを封じ込める方法を採用しました。

これには、和のりを使いこなせる、腕の良い経師屋さんの協力が必要です。大型パネルで、総枚数も多い。スピードも要求されます。専門の経師職人さん達に作業をお願いすることにしましたが、またこれも人海戦術。

次回は、ここからの作業の工程を書かせていただきます。

仕事も人生も何が起きても真っ向勝負!   

  額装屋の㈱アート・コアマエダ(店主)