あこがれの職人③

あれから色々ありました。

何度もお願いして、やっと憧れの長尾廣吉の外弟子に・・・(初対面から7ヵ月後)。
初めの頃は手の動き、手順などは一瞬も見逃すまいと必死に動きを追っていました。
その為目の玉が乾きそうになるほどに・・・。
額縁が完成しますと、いつものことですが布製の袋におしまいになります。
その動作がですね。
まるで作法のようで美しいのです。
そして何ともいえぬ、最愛の我が子を抱擁するような・・・。
そんな姿に見えたのです。

できれば・ビデオにでも残しておきたかったな~。
今の若い職人達にもみせてあげたかったですね。

晩年体調を崩されてからもお弟子さんの作った額縁は
必ずご自分の手と指先と眼で厳格に確認をしておられました。
匠の真髄ですね。

「額縁にはねえ。造る人の心が出るんだよ。
「良い額を造ろうと思えば心を込めて、・・・決して手間を惜しんではいけない」
「気を緩めてはいけない」

イブシ銀の温厚なお顔なのですが、姿には修行僧のような濃厚のオーラを感じました。

ある日、無知から生じた技術的な質問をしましたところ
丁寧に指導をいただきました。

そして

「私のやり方をテクニックとして覚えるのは良いが、これからはあなた自身の方法を見つけないといけないよ。あなたのオリジナルのね」
「そこで、初めてあなた自身の風格が、額縁ににじみ出てくるものなんだ」
「これが、味になるんだ」
「いいですか」
「良い額を造り続けながら人間も磨けよ」
「まだ無理か・・・でもこれからだな。がんばるんだよ(笑い)」
なんだか禅問答が、多かったものですから、すべてをご紹介できないのですが、
この頃に現在の仕事の基礎ができたと思いますね。
生涯感謝を忘れることができません。

これからの時代を額縁職人としてどう生きていくべきか?
悩むところですが、まずは亡き師匠に笑われないように
姿勢を正して真摯に研鑽を続けていきたいと考えています。
そして後継者の育成も忘れてはいけません。

  師匠に憧れた感謝の額縁屋 ㈱アート・コアマエダ