作品に再会

こんにちは。
湿度の高い毎日です。
お元気でしょうか。

昨日のことです。
あるオークション会社のカタログを見ていて、嬉しい再会がありました。
図らずもあの先生の絵を発見したのです。
間違いない。
小生が、子供の頃に度肝を抜かれた強烈な印象。
ずうーっと気になっていたあの先生の作品です。

早速インターネットで調べてみました。
神戸在住とある。
年号も符合する。
間違いなくあの上前智裕(ちゆ)先生だ。
なんと92歳のご高齢とある。

「光陰矢のごとし・・・か」

上前先生との出会いは小生がまだ小学生だった頃。

小雪舞う寒い日の近所の庭先。
頭から水をかぶったふんどし姿のおじさんが仁王立ち。
身体はみるみる桜色。
その後、頭に白い手ぬぐいのようなものを巻き
2~3メートル四方もある板のキャンバスに
気合を爆発させるようにして絵を描き始められた。
真剣な目。
真一文字の口元。
首のあたりから昇る湯気。
芸術家として格闘しておられる姿を何度も見かけた。
しばらくすると顔も身体も絵の具だらけ。
いつも真剣勝負。
あの求道者のような純粋な姿は、今もまぶしく印象に残っています。

ある時、自分の描いた絵を先生に批評してもらいたくて母親に懇願しました。
近所の奥様ネットワークを駆使してくれた母のお陰で
数点の作品と自信作の「船の絵」を見ていただけることになりました。
実は、褒めていただける自信があったのです。
小学校の教室に張り出された絵ばかりでした。

先生は

「これは、上手に描こうと思って描いたんだね」
「うまいね、と言ってもらいたい気持ちが前に出てる絵だなぁ」
「君だけでなく、みんなそうなんだがね」

と言って頭を撫でてくださいました。

温厚な先生でしたが、まことに「率直」な批評。
今も自分の心の中に生きている、最高ランクの「言葉」の一つです。

「現代っ子ミュージアム」をはじめ多くの場所で今もご活躍とのこと。
7月4日から国立新美術館で開催される「ニッポンの前衛18年の軌跡」
の出展予定者にも名前が記されています。

もしかしたらお会いできるかもしれません。
その後は、ロスアンゼルス現代美術館(MOCA)全米巡回予定とありました。

ご高齢でもあり益々のご健康を心からお祈りするばかりです。

                額装職人㈱アート・コアマエダ