夢みる職人 ②

あれは確か昭和53年頃
どこであったか・・・正確には、忘れましたが、
どこかの画廊会場で、お会いしました。
50代後半の紳士。
名刺には、「長尾商店 代表 長尾廣吉」とありました。
「長尾です。三代目ですが、私は、次男ですから、分家です」
「磯谷(いそがや)の初代の孫になります」
静かに、話されるのが、好印象でした。
「子供の頃から、額縁の作業場で育ったようなものですから・・・(笑)」  

この日は、私の人生において、記念すべき日になりました。

「長尾商店」
江古田の哲学堂の近くにありました。
閑静な住宅街です。
住宅兼工房になっていました。

桜満開の季節、初めて訪問させていただきました。
緊張しましたね。
広い立派な和風の応接間に案内されたのです。
その日は試作も含めて10枚位の額縁が、間隔をあけて並んでいたように思います。
当時の私共の力量をはるかに超えた素晴らしい額縁ばかり。
感動と、自信喪失のこんがらがった複雑な心理状態に陥りました。
 
2度目の訪問の時、配達される直前の額装品を見せていただきました。
小品ばかり7~8点。
作品と額縁が、ピッタリと調和しているのです。
額縁が作品の良いところを「うまーく」引き出している。
素晴らしいものばかりでした。
品質の問題とは別次元の・・・。
なんといいますか、上等の品性、風格が漂っているのです。
技量を超えた何かがある。
理屈はわからないけど、きっと何かがある。
それは何だろう。

それが知りたくて、以後、何度も訪問させていただくことになります。

続きは次回にさせていただきましょう。

急激な寒さ、風邪にはご注意ください。

           額縁の㈱アート・コアマエダ