感動のストーリー

明けましておめでとうございます。素晴らしい新年をお迎えになったことと存じます。

今年もどうぞよろしくお願い致します。

今年は、賀状を珍しい人達からいただきました。何十年もご無沙汰をしている学生時代の友人達からです。新しいOB会名簿が発刊されたからだと思います。今は、それぞれ悠々自適の様子。懐かしく嬉しかったです。

小生は学生時代、ボクシング部に所属していました。おおむね、その関係のメンバーからです。

その話を少しさせていただきます。

アマチュアでも当時はヘッドギヤを付けず、プロと同じ状態で試合をやっていました。

グローブは8オンス。
赤色。

見た目は、ふっくらしていますが、当たれば手袋の様でした。「がっつん」そんな感覚でした。一ラウンド3分の3ラウンド制。地方予選の時は、1日に2試合やったこともありました。当時の試合会場は、大阪難波の府立体育館(別館)が多かったですね。

機会がある度に町のプロのジムでもスパーリングなどをやらせてもらっていました。試合前の減量に苦しんだこともありました。空腹の思い出です。勝った試合より負けた試合の方が、記憶に残っています。

1年目2年目はストイックな時代。練習も試合も必死にやっていました。徐々に強くなっていく自分を確認できて、とにかく毎日が充実の時期です。3年目になると少し余裕が出てきます。4年目くらいになると、対戦相手によっては、事前に試合のストーリーを組み立てられるようになります。1ラウンドの様子を見ながらアウトボクシングかインファイトか、などを決めます。もっと余裕のある時は、リングに上がる前からシナリオを完成させてしまいます。

相手との力量に差があると推定した場合は、感動のストーリーを組み立てるのです。1ラウンド2ラウンドは相手に手を出させて、自分は軽く動く。少々打たれたりして、参った振りをする。フラフラの演技を交えて相手にパンチを無駄振りさせるのです。ダラダラとインファイトに持ち込んで、スタミナを浪費させたりもします。

相手が疲れるのを待って、そこで一気に攻め立てる。逆転のKOを演出する。「すごいなあ!」「根性あるなあ!」なんて称賛される。ボクサー憧れのパフォーマンスを。

4年生の秋の試合でもこれを企てました。相手は2年後輩の新鋭です。2ラウンドまで打たせて、相手が疲れたのを確認して一気に猛攻する作戦。いつものように手数を出させて相手のスピードが落ちるのを待ちました。顎など、急所だけは絶対に打たせないようにカバーして相手の消耗を待ちます。ポイントは、確実に取られているけど大丈夫。いよいよ3ラウンド目になりました。ここで怒涛の連打を爆発させて相手を倒すことに・・・。

(以上は、あくまでも予定のストーりー)

しかし、この時の相手、トレーニング充分でスピードがなかなか落ちません。得意の連打をしてもバックステップが早くてジャブしか当たりません。しかしキャリアには、差があったので必ず倒せると最後まで信じて、攻撃をつづけました。

右さえ当たればかならず・・・。スタミナもまだ大丈夫。でも時間は確実に過ぎていく。焦りと空回りを感じ、ほとんどパニックの領域です。

そこで、「か~ん!」と非情のゴング。

「不完全燃焼」

結果は、判定負け。

ストーリーの崩壊です。最初から真剣にやるべきだった。

その後、その選手はメキシコオリンピックの候補になりましたが、何らかの事情で出場しませんでした。そして、プロに転向。嬉しいことに全日本のウエルター級のチャンピオンになり何度か防衛。世界戦も経験するほどに成長しました。

(教訓)世には、凄いと思われたい地獄がある!
 
遠い昔の思い出とともに今年も気持ちを引き締めてスタートさせていただきます。

         額装の㈱アート・コアマエダ(店主)