抜け殻に


いよいよ暑い季節がやってきました。

こんにちは。

17年前のこの季節、取引先の社長さん、画家、額縁屋という混成で、中国へ冒険旅行に出かけました。そこで腕白おやじ達は、チベット近くの高い山へ登ることにしたのです。まだ皆、若かったものですから、我先にと登りました。高山病らしき頭痛に悩まされながらも全員シッカリ「登頂」。天候が崩れそうだというので達成感を味わう余裕もなく急いで下山。「ひざ」のガクガクに耐えながら今度は、へっぴり腰で。

やがて麓近くの小さな古い寺の前に出ました。柱は色が剥がれて、木肌がむき出し、ひび割れもしていたように思います。でも、荒れ放題という印象ではないのです。日本のお寺の様に緑の大木は無く、岩に挟まれて防風されていました。色落ちした紫と白のハンカチくらいの小布が「のれん」の様にヒラヒラと。手前には、たしか賽銭箱らしき物が歪んだまま置いてあったように思います。懐かしいところに迷い込んだ不思議な感覚でした。

現地の「登山ガイド」さんに寺の由来を聞いたのですが、今はよく思い出せません。質素、純朴、の極み。古く遠い昔に来たことがあるような。心の「ざわつき」は、暫く収まりませんでした。

インドにはバラモン教があり、お釈迦さんも元はバラモン教の信者だったそうです。悟りを開いた後、お釈迦さんの仏教は、シルクロードを経て中国に渡りました。そこでサンスクリット語が、漢語に変換されて経典となり、儒教や朱子学が混入し、やがて日本へ伝わったと聞きます。その後、1960年代の文化大革命で極端な弾圧と破壊が行われ、中国仏教は抜け殻の様になりました。

日本には、仏教が多くの種類に分派して到来。時の権力者達に翻弄された形跡もあります。今では、修行者も妻帯は許され、お酒も飲めますし、カラオケもやるそうです。駐車場やマンション経営にも精を出す程に「おおらか」になり、我々は、広大な敷地の豪勢なお寺へ集まり、謹んでご利益を頂戴するという幸せな時代になりました。

今、幸せを感じるからこそ「あの抜け殻のような古い小さなお寺にもう一度行ってみたい・・・」

   夏はもうそこまで  額装の㈱アート・コアマエダ(店主)