誰にもある「原点」

こんにちは。寒くなりました。お元気ですか。

ご紹介します。

日本に居住して世界の舞台で頑張っている芸術工房があります。主宰者は、村上隆氏。その工房の名を「カイカイ・キキ」と言います。奇妙な名前ですが、現代アートの世界では、高名な芸術家集団です。

以前は、「ヒロポンファクトリー」と言いました。

うっ!

随分ふざけた名前だと思う方もおられるでしょう。小生も少しそう思います。

実際は、大真面目派の頭目。この業界ナンバーワンの現代アートの求道者であり、世界が注目している芸術家です。「アートは、集団でやるべし」の信念で活動中。出版物も「芸術起業論」など多数ありです。

工房では、美大やアカデミーを卒業した若者たちが、大勢で創作活動をしています。若手アーチストのプロデュースもしています。大きいイベント時には、200人ほどのスタッフが関わるといいます。
   
最近では、スーパーフラットコレクション(横浜美術館)、昨年は、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞の「村上隆の五百羅漢図展」(森美術館)  

主宰者の村上氏は、集団を率いるにあたって、スタッフに大きい声で叱り飛ばすことがあるそうです。時には近くにあるものを壊したりして、怒りの姿で厳しく指導することもあるという。

それによって目覚める場合もあるが、多数派である普通の神経の持ち主のスタッフは、強暴と独裁を感じて、なんだかんだの理由を付けて退職してしまうと・・・。そのような時、村上氏は、残念だがご縁がなかったものとして割り切ることにしていた・・・といいます。

ところがですね、最近では面接の段階で、こんな話をすることにしたそうです。

この世の中は理不尽なことが多い。一部の恵まれた人たちを頂点にしてヒエラルキーがガッチリと形成されている。それが、動かすことのできない現実です。この形が崩れることはまずない、と思ってよい。それを前提に確認をしておくが、我々アーチストは社会の中で何の生産性をも持たない、そして何の保証もない最下層のところに居るんだよ。並みの苦労や努力では這い上がれない位置から、君たちはスタートしようとしていることを忘れてはいけない。

これが今の君の現実であり「原点」だ、と。

なかなか言えないことですが、この「原点」を徹底して理解させてから入門させることにしたそうです。そのせいか、現在では退職者は減少しているという。

以上、村上隆氏の著書でのエピソード。(どの本だったかは失念)

私達の周りでも、安易に現場を放棄したり逃げたりするパターンがあります。逆にそれを乗り越えて、逆境であろうがなんであろうが成し遂げようとする人達もいるのです。

その違いは、どこから生まれるのか。

それが、そもそも「原点」の認識の違いだとこの主宰者は教えてくれているように思います。

余談ですが、小生共は、団塊の世代です。親達は、一様にあの悲惨な戦争を経てきました。食べる物も着る物も乏しい戦後、必死で働いて我々を育ててくれました。その子供として、少々のことで諦めては、申し訳ないという強烈な無意識の「原点」があって、何とか、私たちは、ここに立っているような気がします。

     額装の㈱アート・コアマエダ(店主)