思い込みを訂正しなければ・・・



こんにちは。
まだ残暑の日々ですがお元気でしょうか。

自らの思い込みの訂正の話、
それは額装という言葉です。
最近の創語だと思っていました。
ずーっとそう思い込んでいました。
な~んだ、そんな話しか・・・と思われそうですが、
私にとっては、大変なことでした。
57年前に出版されていたこの本には
「額装」という単語がすでに随所に出てきています。

それほど最近の新語では、なかったのですね。

この本は岡村多聞堂の創業者、岡村辰雄氏が、
渾身の執筆にて限定版で発刊されたものです。
(デザインは、安井曽太郎氏によるもの)



早速、序文のところで梅原龍三郎氏が語っています。

・・・「額装」というのは、新語のようにもおもうが、中々ぴったりしている。或いは、岡村君の創語かと思う・・・


57年前当時すでに使われていたということです。
本の内容については、圧巻で一言や二言では語れません。
「油絵と額装」
「日本画と額装」
「建築と額装」
その他、床の間、絵馬、和額、について・・・。
そして「額装」という仕事について等、詳細にまとめられています。
重みのある文章です。

当時の額装業界の状況や岡村氏の思いが淡々と述べられています。

日本の額縁が、室内装飾として認識され重視されてきたのは最近のことで、海外にまで誇るに足るものが出てきたとは思っていません。

ヨーロッパの各国が各自特徴的額縁制作を成し遂げたように、日本の特色を持った額縁の出現こそ、我々のこの道に従事する者の今後の課題である。


そして、額装の仕事に携わる人たちへの心構えについて。

仕事には多くの経験が大切のようです。しかし、もっと大切なことは優れた師匠につくことで、師匠と伝承、苦心と研究の精髄を会得して、その基礎の上に自分の研究を加えるべきでありましょう。

30年や40年の経験をもってしても、仕事の世界では深く広く究めることは容易ではない、という思いがしています


当時は親方と弟子の関係で成立していた社会背景がありましたから、額装業の開拓者として仕事の本質を究めようとした岡村氏の情熱を行間に感じます。

もったいなくてですね、何度も読み直すつもりです。
そして、この本を提供していただいた
日動画廊の長澤氏に心からお礼を申し上げます。

先人のご苦労を継承すべく、今日も精進です。

この業界も若い人たちが技術を継承しつつあります。
新時代相応の額装技術を切り拓いていっていただきたいですね。

   残暑の中、今日も精進します。 額装の㈱アート・コアマエダ